RECORD

Eno.3 マイリーの記録

Dear Miley(9)

――否定して、否定して、否定し続ける。
オレが消えてなくなるまで終わらない遊びへの執着。
子供は友達と遊びたがっている。子供がそうあり続ける限り常に頭の中に居座る気持ち。

それを否定するのは、ずっと真っ直ぐ歩き続ける程度のモノ。難しい事ではない。
そこに左右へと続く分かれ道が何度も見えるような……
道を逸れれば何かが見つかるような……そんな感覚。
眠る事の無いオレは一度も気を休める事が出来ない。たった一度の気まぐれで全てが崩れるから。

親からの愛を得る機会を奪い、あまつさえ危害を加えようと思っている。
これを悪霊と呼ばずになんと呼ぶのだろうか……



子供は壊れた小さなイスに座りながら何度か伸びをしていた。
ほとんど暴走に近い力の行使は少なからず負担があったのか、疲れを感じている。
だが、その程度で子供が抱く遊びへの想いは消えない。
途端にオレが否定し続けていた“子供と遊びたい”という気持ちが強くなる。

「もうへいき! マイリーといっしょにあそぼう?」

先程まで否定し続けられていたのは子供がこちらに集中していなかったからだ。
桁違いの誘惑。否定しても弱まる気配すら見せない遊びへの執着。
たった一人の友達に対する想いは凄まじいモノであった。

だからこそ否定する言葉を口には出せない。
この想いの強さは今の子供が持つ唯一の拠り所だから。
両親と遊んだ子供は楽しかったと想いを口にしていたから。

その子供の気持ちと、確かにそこにあった両親との楽しい想い出まで否定したくない。

『……オ、レは玩具を使った遊びより喋る方が好きでな』

「マイリーいつもお話してたよ? きょうはあそぶ日ー!」

否定する。否定して、否定し続ける。頭がおかしくなりそうなほどに抗う。
この遊びを否定せずに、オレと子供が遊ばずに済む術を周囲に目を向けながら探す。

――その時、今までこの部屋に無かった一通の封筒を暗い部屋で見つけた。

『……それ、さっきまで無かったよな? 不思議だと思わないか?』

オレの目線の先を追うようにして子供は一通の封筒を見つける。
注意が逸れたことでオレの中にあった“子供と遊びたい”という気持ちが少し軽くなる。

「ホントだ。なんだろねコレ?」

苦し紛れに出た言葉がなんとか状況を首の皮一枚でつなぐ。
子供は立ち上がるとそれに近づき、拾い上げてみるが暗い部屋ではよく見えない。
カーテンの無くなった窓まで歩くと、少ない光源でそれを確かめた。

「よめない……ともだちはよめる?」

オレの中にある“子供と遊びたい”という気持ちがどんどん軽くなる。
子供が今、興味を示しているのは友達が不思議だと言ったモノ。
それがオレにも影響を及ぼしているのだろう。コレなら耐えられる。

『読めるさ。ちょっと待ってろ』

封筒を手にした子供の方へと向かう。
窓辺に集まったオレと子供は一緒にその封筒を見た。

『……フラウィウス招待状?』