RECORD

Eno.163 惨禍の記録

亜人問題(講師:マニーズ

亜人問題デミ・トラブル

この言葉には様々な意味が込められている。
まあほんっとうに挙げるときりがないんだけれど……、種族問題。宗教問題。異文化問題。言語問題。食料問題。環境問題。
異種族と共存するに至り、様々な問題が起きうる全てが、この言葉に集約されていると思っていい。
そうだね、結局のところこの問題が指し示す根本の原因はたった一つ。

果たして亜人は人か魔物か。

……あ、いやそ~な顔をした子が居たねえ。ふふ。
先生も耳長エルフと呼ばれる種族ですが、この問いかけや思想はよく当たるものです。只人ヒューマンに最も近い種と言われている耳長ですらそうなんですから、もっと身体的な特徴に亜人要素を持つ子は苦労してきたことでしょう。
ですが、この問題は『亜人もみんな人なんだ!』で割り切れないだけの問題を多く抱えています。
理由は簡単。
この世界で最も古く、多い種族は只人ヒューマンだからです。
只人ヒューマンの子も聞いてね、これは別にあなた達の種を批判している、とかではないから。

もともとこの世界では、只人ヒューマンのみが住んでいた。
これは迷宮ダンジョンの出現前からの記録でも明らかであり、捏造や誇張ではない、というのは人類学研究学会が認めるものであります。
只人ヒューマンの肌の色が黒とか黄色とか白とか、カラーバリエーションがあった程度で……耳長はもちろん、髭野人ドワーフ獣人ビースター魚人マーマン有翼人ハルピュイア有角人オグル爬虫類人レプティリアン存在しませんでした。
これらが現れたのは迷宮の出現以降───つまり、迷宮が現れ出した後に各種族が発見されたの。
これに関しては色々と学説があるわ。
迷宮の近くで暮らす事で環境適応が急激に引き起こされたのではないか説。
迷宮に居た魔物と人間が交わったことによる交雑種説。
元々迷宮があった異世界などから、人が流れてきた説。
そして……迷宮が現れたことによる動植物の魔物化現象が人に適用されたのではないか、という説。
どちらにせよ、今まで自分たち以外の知的生命体を見たことがなかった当時の只人ヒューマンにはなかなか受け入れられないものだったの。
特に迷宮により急速なレベルアップでの弊害……魔物堕ち、というものを知りだしてからは余計にその感情は強まったわ。
今でこそ亜人協定や、異種族との摩擦緩和のための国際亜人認定協会なんていうものもできているけれど、その差別意識……というものは今なおこびりついているわ。
またこれらの差別意識は連動して亜人達にも引き起こされたの。只人ヒューマンという種を憎むもの、同じ亜人という組み分けの中でも認定を受けている、いないで大きく差別するもの、トラブルは尽きないわ。
冒険都市では亜人の差別は出来るだけ排除されているけれど、水面下ではこういった亜人問題は根深く残り続けている。
亜人は人であるか、どうか。
事を間違えれば、只人ヒューマンも、亜人も、全て敵に回しかねないとてもデリケートな問題よ。
気を付けてね。まあ、私の生徒に限ってそんなことはないとおもうけれど。