RECORD

Eno.423 モルドの記録

お嬢様と僕

先祖が悪い怪物だったから。
死なない程度に弱点が多いから。
と言うか単純に気が弱かったから、よく叩かれて、泣いていた。

孤児院の先生に見つかれば助けてもらえたけど、
同じ泣くなら赤ちゃんが優先だから、立って歩ける僕は後回し。

その日も僕は泣いていた。
ときどき配られる、おやつのクッキーを取られて泣いていた。そんな時。

さく。
軽い音がして、甘い匂いがして、顔を上げると、はんぶんこのクッキー。
いいのって聞いたら、いいわって返ってきて、はんぶんこを一緒に食べた。


クッキーを分けてくれた子は、二つ年下の子。
いつも一人でいる、静かで落ち着いた女の子。

次の日、その子を見つけて、そばに寄った。
僕が吸血鬼ということも気にしないみたいで、隣にいさせてくれた。

ほとんど笑うことがなく、お喋りも少ないその子と一緒に。
のんびり日陰ぼっこしたり、絵本を読んだり、お昼寝したり。

ある日、おやつのクッキーを気の強い子たちから死守して、女の子の隣へ。
ちょっぴり誇らしげな気持ちで、はんぶんに割って差し出したら、
ちょっぴりおかしそうに笑いながら、自分のクッキーをはんぶんくれた。


その数年後。
女の子がお金持ちに引き取られることになった。
その時に、仲良しの子も一緒がいいとお願いしてくれたおかげで、
僕もおまけで引き取ってもらえた。養子ではなく、使用人として。

そして、女の子はお嬢様になり。
僕は、お嬢様の所有物となった。