RECORD

Eno.109 ネージュ・コルウスの記録

【閲覧注意】漆黒の嘴

母さんが亡くなってからは、ボクたち家族は何もかもが噛み合わなくなった。
父さんは狂って、きょうだいはお互いすれ違うようになっていった。
末っ子で、羽が真っ白なカラス鳥人のボクは、家族の何か起こる度にストレスの捌け口になる。
ボクの家出の時間は、次第に増えていった。

そんなボクをまともに気にかけてくれるのは、
きょうだいの中の上の方の兄――ダニエル兄さんだけだった。
だけど、ボクはそれを"うざったい"としか感じない。
ボクは母さん以外を、"家族"として認めなかった。今でもそうだ。

それでもボクが大きくなるにつれて、ボクにも"友達"と呼べるひとが増えていった。
学校に通っているうちに、自然と近い年の子たちと、自然と仲良くなれる。
ボクの容姿を褒めてくれる子もたくさんいて、嬉しかった。
ボク自身の詳細な種族を隠せているうちは、特に上手くいった。

……それで、ボクが高校生の頃だったっけ。ボクは今でも、覚えている。

ボクが出会ったその子は、太陽のように明るて眩いひとだった。
それがボクの一度目の人生で二番目に触れた、本心からの優しさ。
けれど、母さんと同じはずのその熱は、ボクには火傷しそうなぐらい熱くて、到底耐えられなかった。

――だから、ボクは。
その子の首筋目掛けて、初めて刃を振るった。
その子の身体が溶岩のような血が流して、
だんだん冷たくなっていくのを、ボクの視覚と触覚で、じっくりと観察した。

そして真っ赤な血に濡れた、ボクの『漆黒の嘴ブラックビーク』を見て。
ようやく「手に入れた」って確信したんだ。