RECORD

Eno.73 天使『ハム』の記録

思う事

自分の思う通りに生きられないのは、不自由に思うが、
べつに「こう生きたい」というビジョンがあるわけではない。

こんな境遇は最悪だと、何を思い出しても思うけれど、
じゃあ成り上がるために何でもするかと問われれば、そんなことはできない。

ああ、人間よ。
欲望の化身よ。
君らならこういう時、どうするのだろうな。


天使に道はない。
違う道を辿るのは、才能のある一握りだ。
使い潰されるのは、なにも自分だけではない。

自分は周りを観察しようとはまるで思わなかったから、
自分のことにしか目を向けていないのだけれど……
そんな生き方をしている自分ですら、
天使は未来のない生き物なのだ、と信じられる。

誰が言ったんだっけな、美しいだけの愚かな生き物と。
罵倒なら誰よりも聞いてきた自信があった。
どの天使もそうであるわけがない、とその時は言ったが。
今となっては、それすら疑える。
多くを見てきたわけではないから。


ここには人間や、人間のような生き物がたくさんいる。
粗暴なものもいれば、屈強なものもいて、酒を飲んだりする。
大人の男ももちろんいる。
いまでこそ、規則に則って正しく暮らしているが、
誰からも見えないところで、静かになぶられたらどうしよう。
そればかり考える。

嫌な夢ばかり見る……

***

あ。
もし、虐げられる天使が救えるのなら、
それがいいかもしれないな。

天使喰いも、水槽も、マーケットも全部潰してやりたい。
いいな。
そうしたら人間の世も、ちょっとはよくなるだろう。

巻き戻しの魔法では、ここにくる前の傷は消えないが、
そもそもそんな傷を負わないような世の中にすればいい。

面白半分で羽を折ってくる連中など、
滅びてしまえばいい。

そうすれば、悪い夢もきっと見なくなる……