Eno.96 プラシオ

■ 選択肢 / 叶わない願い

 
 
好きな場所に行けばいい、と言われた。
ぼくには思い付きもしなかった、新しい選択肢。

でも、本当に出来るんだろうか。

ぼくなんかが、知らない場所に行って生きていけるんだろうか。
負担に、ならないだろうか。

何も知らない、何も出来ない、ぼくなんか…。


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………………。
こんなことを、言われたことがある。


『あなたみたいなおかしな子、いるだけで負担になるの。』
ぼくと同じ髪の色の女の人の言葉。

『どうか恨まないでくれ、仕方ないだろう?』
ぼくと同じ目の色の男の人の言葉。

『『あなたがおかしいんだから。』』


…………それ以来、その二人はぼくに会いに来なくなった。

誰だったのかはわからない。
けれど、ぼくがこんな身体になるまでは、よく会いに来て、笑いかけてくれていた人達だった。


…それからしばらく経った頃、こっそり抜け出した先でその人達を見かけた。

二人の間には、小さな子供がいた。
青い髪、緑色の瞳の、小さな子供。

楽しそうに、幸せそうに、並んで歩いて笑っていた。





                ぼくも、あの場所に行きたかった。
                あんな場所で、生きてみたかった。