Eno.223 九尾のキメラ『シャハル』

■ 夜明けを待つ

キメラは、島を見回っています。
砂浜、森、岩場を順に回って、そしてまた砂浜に戻ってきます。
あちこちで拾っては食べ、釣っては焼き、掬っては蒸留し。
砂浜で静かに座って、そこにいる人達を眺めて僅かに微笑みます。

そこに居る人達がただ、穏やかに過ごせるといいなあ。
そんな風に考えながら。
骨を針にして、自分の尻尾の抜け毛を使って服を作ったり。
拾った貝をつなげてみたり。綺麗な物を拾って、磨いてみたり。

そうやって、キメラはこの島の夜明けを――
脱出できる日を、待っています。

折角だから、この危険な日々も……
いつかは、笑顔になれる思い出になるといいな。

  夜 明 け
『シャハル』は、そう思っています。