Eno.344 月蝕

■ 其れは地が光を遮るが如く

完全で在る筈の天国に綻びが出来た。
天使達は綻びを縫い、元の完全へと修繕する。

或る天使は綻びの其の先を見てしまった。
綻びの先に広がる世界は此処よりも不完全で、
此処よりも醜く、
故に此処よりも魅力的。

"楽しそう"或る天使はそう思った。
そう思ってしまった。
純粋で在る筈の心に羨望が芽生え、その感情が瑕となる。
そうして或る天使は完全では無くなってしまった。