Eno.166 佐藤羽理生

■ ひとり

ぼくは勘違いしていた。

僕はこの島に来て、何もできなくて、なにも拾えなくて、泥水と海藻しかなくて、
暑いし、具合も悪いし、もうここでひとりで死ぬのかなって何度も思った。

誰かの形跡に気づいたのは結構あとだったと思う。ふらふら島を回って、小屋や足跡をようやく見つけて。


水と、魚と、言葉をおいてもらった。
いつも砂浜だった。

ぼくはそれで命拾いした。
今生きているのは、あの人のおかげだ。

それで……ぼくは、頼りがいのある現地の人か、屈強な人が助けてくれているんだと思って。
頼れる人がいるなら安心だって思って……

でも、そうじゃなかったんだ。
向こうも、きっと俺と同じで、流されてきて、ひとりで、不安で、怖くて、帰りたくて……それでも沢山を振り絞って。

なのにぼくは、あなたをわからないまま寄っかかってしまった。

ぼくは…… 何ができるだろう。
たぶん、このまま何もできなくて、もしかして寄っかかることしかできないかもしれなくて、
でも、あなたを誤解したまま寄っかからなくてよかった、と思う。