Eno.186 幻夢の囚われ少年

■ 少年の記憶──05(4DAY)

 



曇天だった空は一変して、見上げれば吸い込まれそうな闇に星々が煌く夜。
古布に落ち葉を詰めて作ったクッションに落ちてたブルーシートなどを用意して、いざ巨木の下で野宿だ。


ガサガサとシートを敷き、ぽふっとクッションを置いて背を巨木に預けて座り込む。
ふうっと一息はいて、ぬいぐるみでもあったらよかったのになー…とふと考える。

あ、ちがうからな!オレがさみしいからとかじゃないぞ!
なんでかわからないけれど、"ナニカ"のために、と思っただけだ!

誰が見てるわけでもないのにそんな言い訳をしてみたりして。一人漫才。




「…………」





不思議とこの場所が落ち着く気分だ。寝泊りするなら断然屋根の下のほうがいいだろうに。
前にもこうやって森の中、木の根元で眠りについていたような気がする。
いつどこでの出来事だったかな。大好きな祖父母のいる田舎で?そうだったか?
それに、誰かも一緒だったような……あれは…………






漂着してから数日の間、島内で探索が可能な場所には一通り足を運び終えたとは思う。
各所に打ち上げられていた漂流物を集めて、拙いながらも工作に励みアレコレと生きるのに必要そうな道具を揃えていった。
その甲斐もあり、現状はある程度食に困ってはいないし、飲料水も都度確保ができている。

少年は己をまだ未熟な子供であると認識してはいるが、祖父に伝授された自然の中で生きる術のおかげで逞しく生き抜いている。

……つい野草を食べて苦い目にあったり、見るからに熟れていない木の実を食べて酸っぱまずい思いをしたりもしているけれど。
何事も経験だ。失敗もカッコいい男の人生に深みを出すのに有用だ。
こんな場所なんだから、見た目がアレでも案外イケる!ってこともあるかもしれないだろ。

ま、さすがに怪しげなきのこはマジでヤバそうで食べてないけどな。これは最終手段だ。


他のみんなは大丈夫だろうか。
おばけは神出鬼没だし、ミコは夜にしか見かけないし、ミケも本物の猫のようにふらりとどこかへ探索へ向かっているようだ。
あと、正体不明な漂流者がほかにもいるような気がしてならない。






幸いにもまだ命の危険を感じてはいないとはいえ、島の環境は確実にゆっくりと少年の命を削いでいっている。






あと、どのくらいでオレは目を覚まし起きるんだ?
もしかしたら、このサバイバル達成の条件は船に乗って脱出することではなくて──…







…──ダメだ、眠くて思考がまとまらない。

「……ここ、ぜんぜん花がないんだ、な……おやすみ、──、───……」