Eno.177 椎葉 紅葉

■ 茜色の日記帳(その1)

あざまるせんせいが日記をつけていることを知った。だからというわけではないけれど、せっかく筆記用具を持っているのだからなにか書いておこうとおもう。なにかしら書いておけばあとから漫画のネタに使えるものがあるかもしれない。

あざまるせんせいが日記をつけているのは正直意外だった…… 過去は振り返らないぜ!みたいなパワフルな人だと思っていたけれど。よく考えたら初めて会ったときに一番丁寧に挨拶をしてくれたのもあざまるせんせいだったし、まめというか…律儀というか、仁義は果たす!みたいなところがあって、俺は面白いなと思う。


そういえばパルロさんが、脱出するのは5人だと言っていた。まさかあざまるせんせいのことを数に入れ忘れているのだろうか……?二人は物を受け渡すときなぜかわざわざ近くの床においてやりとりをしているし、もしかしたらあんまり仲が良くないとかなんだろうか。そうだとしたらすこし悲しい。
パルロさんはマイペースだけど案外お散歩が好きみたいだし、あざまるせんせいと一緒に狩りにでたりしたら仲が深まるんじゃないかなあとか、勝手に想像してしまっている。
なんにせよ6人で脱出できるように俺も頑張りたい……いや、あざまるせんせいは船に乗れなくても自力泳いで帰ってきそうだってちょっと思って一人で笑ってしまった。
…………と思ったら、あざまるせんせいが筏をつくって一人で大海原に乗り出し、ボロボロになって帰ってきた。死んでしまったのかと思って胸のところがギュッてなった……無事じゃないけど、生きていてよかった。筏ではだめなのだろうか。筏で潮に押し戻されたにしては、なにかがおかしいとおもった。
脱出はともかく、みえてる小島までは、泳いで行くほうがよいのかもしれない。


そういえばおとぎせんせいは泳ぐのが上手だった。インドアなイメージがあったら意外だった。
最近はあざまるせんせいに銛突きを教わったのか、おっきなお魚を獲って帰ってくるようになった、サメにも勝っていたようだ、強すぎる……
だけど泳ぐのはつかれるのか、毎日へとへとで帰ってくる……そっとおさかなのクッションを作って置いておいたから、ぐっすり眠ってくれるといいな……


みさきちゃんは単独行動が好きみたいで、時折ふらっと帰ってくる以外はお外で過ごしているみたいだ、男ばかりいるから落ち着かないのかもしれないし、別になんともおもってないのかもしれない。
野生動物もいるみたいだから心配ではあるけれど、みさきちゃんが力尽きるのまったく想像できないから大丈夫だと思う。ほかの全員が力尽きても、みさきちゃんだけは最期まで生き抜きそうな予感がある。


あと、悲しいこともあった。
鶄大良さんに怒られてしまったのだった。俺がパルロさんに血をわけたこと……軽率だったとは、思っている……だけど……
……
俺はみんながすこしでもしあわせに過ごせればいいとおもっているし、だれかが我慢してるのはなんだか嫌だって思うし、自分ができることで解決するならそうしてあげたいって思う、友達だから。

……また怒られてしまうだろうか、鶄大良さんの悲しい顔は見たくない。
鶄大良さんが死んでしまうのも、いやだ。

魔のものは魔が尽きなければ死ぬことはないというのなら、俺が生きてる間に魔が高まるようなことを目一杯しておけば 島が沈んでもなんとか鶄大良さんだけは生き延びられないだろうか?