Eno.302 望月 黒羽

■ ノートの切れ端3

お散歩を、してきた。
……ひよりさんと一緒に。

誰かと一緒にいるのは久しぶりで、
誰かに声を届けるのは久しぶりで、
とても、とても緊張した。




もしかしたら、とは思ってた。
けれど、ひよりさんは鴉を嫌いじゃないらしい。

鴉は凶兆の鳥。
鴉は不幸の運び手。
鴉は汚らわしい歌声の主。

ずっと、そういわれてきた。
ずっと、そうだと諦めてた。

……なのに。

一緒に幸せになろう って。



誰かと一緒に居れる、なんて思ったことなかった。
誰とも幸せを目指せる、なんて考えたことなかった。

びっくりして、うれしくて。
よくわからなくなっちゃった。

そんな私をひよりさんは包んでくれた。
……もし、もしも。
おかあさん、がいるとしたらこんななのかな……?



拠点に帰るとき、直接手を触られて。
手を繋いで、緊張した。
ひよりさんイヤだったりしなかった、かな?



正直、まだこわいことはたくさんある。
姿を見せるのも、誰かと話すのも、目を合わせるのも。

でも、少しずつ……できていったらいいな、って。思う。

……この島の他の方たちも、もしかしたら……なんていうのは、夢を見すぎ、かな。