■ DAY 4
流刑付添い人のおしごとは、罪人が陸に流れ着かないようにすること。
最果てをめざす船旅は、おわりまでずっと海の上で過ごす。
あの子はだんだん喋らなくなって、日記も書かなくなった。
あの子が大事に持ってた日記は40ページぐらいで途切れたの。
空が晴れれば、お日様がじりじり熱くて苦しそうだった。
雨が降れば、ずっと寒そうにしながらうずくまって寝てた。
「帰らないよ」
「帰れないよってちゃんと言ったもの」
あの子が最果てを見たいって言ったから。
私が最果てに行こうって言ったから。
私はそのあいだずっと、船を漕いでた。
オールを持った手はもうぼろぼろで、手のひらの皮がすりむけて痛かった。
「おやすみ、明日も起きてね」
眠るときのあいさつも、そのうち変わった。
私だけが元気だった。
あの子はほとんど起きなくなった。
それからずっと雨が続いて、たまった雨水の重みで船がはんぶん沈んだころ。
私の船はとうとうひっくり返って、ふたりとも海に投げ出されて。
私はすぐにあの子の手をつかんで船にしがみついた。
「だいじょうぶ?」って声をかけてみたら、
「すごい! あなたってとっても息が長いのね!」
最果てはとっても素敵なところ。
海が流れ落ちる滝のそばには人魚が住んでいて、
世界にいられなくなった人を世界が終わる場所までつれていってくれる。
でも、世界の果てにたどり着けるのは選ばれた人だけ。
選ばれなかった人は途中でひからびて死んじゃうの。
私が知ってる最果てと、あの子が知ってる最果ては違ったみたい。
私たちはまた、ひっくり返った船の上に乗った。
あの子も私もまだひからびてなかったから。
それなのに、いまは私だけがこの島にいる。
いかだを作った。
インディゴ号とおなじなのは小ささだけで、
かたちはまるで似ても似つかない、まっ平らな船。
青い巻き貝のネックレスを帆にかける。
インディゴ号はどこかの浜でぐちゃぐちゃになってるんだろうな。