Eno.38 白恋たると

■ 何でもない日

 
昨日は昼間から岩場に顔を出して、島の皆と平和に過ごした。

呪物じみた石像を建てるだとか、騒いで悪霊を祓うだとか……
のんびりと時間が経過するのと共に、
次々と愉快な話題が場に飛び交っていた。

けれど、馬鹿話の合間に
やっぱり寂しさを感じる瞬間はやって来る。

もう何日かすれば、この島は潮の満ち引きによって沈んでしまう。
お別れ、という言葉を聴いて、
僅かに胸がチクリと痛むのは気のせいじゃなかった。

きっと何とかなるのだと、漠然と祈るだけでは駄目かもしれない……

けれど、今はもう少しだけ。
この絶望的で不安定で、それでいて大切な日常を信じていたいと思った。

「ヘイッ」


  ブンッ

生まれて初めて、素手で粘土を投げた。