Eno.170 アルザス・リースリング

■ シーエルフの神隠し

この島の誰にも話していないが、俺の街はすでに海に還っていて、シーエルフの仲間おろか街の生き残りは俺しかいない(正確にはもう一人いるが、あれを生き残りとは思いたくない)。今ではそれを受け入れて、冒険者として仲間たちと上手くやっているのだから、何があるか分かったものではないなと思う。

この島にはお人よしが多い。
困っていれば手を差し伸べる。余裕があるなら物資を交換する。なければ押し付ける。
冗談を言い合ったりふざけあったり、なかなかに居心地がいい。だからといって、ここに永住はできない。俺には帰る場所がある。


夜にどうしてこの島に来たのかが話題に上がり、そうして全員が共通してこの答えに辿りついた。
『一種の神隠しなのではないか?』と。




つまり。
これは神隠しだから遭難じゃない!!
神隠しだから笑い者にはならない!!
仲間にもこれは異世界に迷い込みましたって言える!!!!

遭難じゃ!!ない!!!!

やった~~~~~~~!!
一生の恥なんかじゃなかった~~~~~~~~~~~~!!



え?街が滅んでるなら恥にならないだろって?
仲間が一生弄ってくるのが目に見えてるんだよ。