Eno.186 幻夢の囚われ少年

■ 少年の記憶──08(5DAY)

 

「う゛……さむ、い……」



少年は意識が朦朧とし、時折うめき声が漏れている。

どうやら少しばかり体調を崩してしまったようだ。
雨に降られて起床からのずぶ濡れになりながらも多少は出来ることを、と動き回ったせいだろう。

だっていつ船が通るかもわからないのだから見張りはしておかないと。



万年風邪知らずで元気は取り柄の一つなのに、なんてこった……不甲斐ない己の肉体に物申したい!

……と己の弱さに胸中毒づいてみても体調が戻るわけでもない。
ここは大人しく休眠することに集中するべし。快復させるにはそれしかない。
寝るとわりとなんでも治るから、な!



ただ、少年が横たわっているのは森の中。それも外だ。
野宿先にしている巨木の根元にがっつり倒れている。

幸い今夜も晴れているようだが、またいつ降りだすかわからない。
肉体の強度を嘆くよりも学習能力が低いのが問題なのかも。





「……ミコ、に……『風邪ひくぞ』って言わなくて、よか、た……


少女に注意をした少年のほうが引いてるなんてカッコ悪すぎだもんな。









ズキズキ
……胸に疼く痛みを感じながら、少年の意識は深く深くおちていく……














寒いのは嫌だ。あの瞬間がまた来てしまうような恐怖に襲われるから。



一人だった。誰もいない。体の震えは止まらず声も出せない。手足はどんどん動かなくなっていった。

さびしくてさびしくて…………











ああ、そうだ。
オレは……あの時あの森の中で░░░░だった。


そして、──と───に出会ったのはその後。やっぱりあの森の中で。









かさかさ。

誰かが近づいてくる音が聞こえる、わからない。動物の足音かもしれない。
意識がはっきりしない……体が重い。


ふわり。ぱらぱら。

何かが体に覆いかぶさってきた。
続けざまに葉が舞うような音と共にたくさんたくさん降ってくる感覚。
なんだろう、なにが起こっているのかわからないよ……目があかないんだ……でも、






「…………あたたかい」