Eno.287 部族

■ 森の民の思案3

今日は久々に良き日となった。
ようやくあの野蛮な盗人から我らが精霊の杯を取り戻すことができたのだ。

これで胸を張って……とはいかないだろうが、
少なくとも村の者たちに顔向けができる。

あの余所者は精霊の力で呪われて醜い姿になっていた。
今頃は元の姿に戻っていることだろう。
そして呪いの源が自分の犯した愚行であることにも気づいた筈だ。

二度と奴は精霊の杯に手を出そうとはするまい。
我らにとっては唯一無二の祭具でも、奴にとっては数ある財宝の一つに過ぎない。
まさかあのような姿になってまでこれを取り戻そうとはしないだろう。

これであとは無事に島を脱出するだけだ。