Eno.331 アイジロ

■ 12 物理的に見えないところで

暑さも和らぐころ、今日最後の散策をして
資材に余裕が出たからイカダを作りたい、と少年が言う。
どうやら石の斧ではもたないらしく、鉄の斧を渡そうとしたがなにか嫌な予感がしたらしい。 イカダは最後の手段にしようということになった。
よく考えたら潮が引いたらまたこの島はここにあるんだから救援があるなら定点を回るだろう。
作れるなら作りたいね、とたびたび話していたのに作れるってところになって気づく。
近づけば遠ざかる、帰り道
……これに関しては俺よりカーシー少年が心配だ
一日でも早く船が見つけてくれることを願う

せめて穏やかな眠りをとってほしい。
ものの整理も終わり明日に備えようとして、事件は起きた。



ワサワサが海に出た


急に群れからいくつかに視界を覆われたり足に絡みつかれたり、何が起きたかと聞く前に挙がる少年の悲鳴、足止め、あしどめ、鱗粉
振り払うことは容易いが同じ火で焼いた魚を食った仲、特徴や個性をもつもの。
群れを構築するたくさんのうちの一つだとしても手荒な真似はできなかった。

開放された時には既に『終わって』いた


沖の方に流れ始めたが、波にイカダが浚われてしまったらしい。
小屋に戻ってきたときにはもう乾いているものもいれば、焚き火の近くに転がるもの、伸びるもの。


もしかしてこの服は別れの餞別のつもりだったのか……???
俺にはなにもわからない……