Eno.41 カーシー・バクスター

■ 何日目の朝かなー

昨晩、ワサワサが一人(?)でイカダに乗って海へ出た。

僕はイカダを作ることに賛成だった。
島を出ることはできない、とは思っていたけれど、
島が海に沈んだときに、船を待つぐらいならできるはず。
食料も水もいっぱいあるから、
みんなが一台ずつイカダに乗って、
それぞれのイカダをロープでつないではぐれないようにしたら
全員助かるかなとか、いろいろなことを考えていた。

でも、昨日はとっても悪い予感がした。
試し乗りだったとしても、イカダは悪い結果を運んでくる――
唐突にそう思ったんだ。
それはこの島が海へ沈む前だったからそう思ったのかもしれない。
島が沈むときは、イカダに頼らなきゃ僕らも沈んじゃう。

だから、僕は、イカダを作るのはやめようと思った。
材料はあるからあとは鉄の斧さえあればいいんだけど、
すぐに作って使う必要はないから、まだいいって。

そしたら、その話を聞いていたのか、
ワサワサがイカダを使って海へ出てしまった。

僕のせいなのかな……。
本当にびっくりした。
ワサワサは人間とは違う、と思っている。
だから、人間が考えていることとは別のことを考えているんだと思う。
『命を大事にする』ことが、ワサワサにとって
僕らと同じくらいかというと、そうじゃないみたい。

ワサワサはよく生命力も少なくなっている。
体力の限界まで動いているのかな。
そこまでして仕事をまかせてしまうのは、
僕はよくは思わない。

救急セットを作るようになったのも、
ちょっとワサワサのことを考えていたってこともある。
すーぐこういう無理をするんだから!
思わずひとつ押し付けちゃったよ。

無事に帰って来れてよかったと思う。
数が減っていなければいいなと思う。
ワサワサはよくわからない生き物だけど、大事な仲間だ。
こんな事故で『離脱』してほしくない。

ほかのみんなもそう。
みんなで帰らなきゃ、意味がない。
誰も無理せず、万全の状態でその時を迎えられるといいな。
それで、それぞれの生活に戻っていく――
――ミソニは、元の世界には戻らなさそうだけれど。

ミソニはどこにいくんだろう。
アイジロが連れて帰ってくれたりしないかな。
僕の世界では、あの見た目だと、天使にひどい目に遭わされてしまうかもしれない……。