Eno.194 ルガD

■ 昏くて深い海の中

「ユウリさんからクッションをいただきました!」



これを抱いて寝ると快適です!ユウリさんは器用ですねえ。
こんな素晴らしいものが作れてしまうくらいには、
我々の遭難生活も安定してきたということでしょう。
……依然として、海産物はほぼ全滅していますが!
中には石像を建てられている方までいらっしゃいます。

「またひとつ勇気づけられてしまいましたね」



ですがやはり、彼女には少し翳りが見られます。
あの制服……そんなに思い入れのあるものだったのでしょうか?
知らず知らずのうちに失言をしていたのは確かです。
何か私が忘れている事があるのなら、早く思い出して謝りたいところですが……

「いつまでも頼りないスタッフでは居られません!」



どなたのものか存じ上げませんが、水着を拾いました。
サイズが合っていたのでこれでユウリさんがよくされていた素潜りに挑戦しました。
深い海はどこまでも昏くて、雨の中では上下が逆転してしまいそうです。
もしも彼女もまたそんな中に迷い込んでいるとしたら……

物理的な面だけでなく、精神的な面でも頼れるディレクターにならなければ
生還できたとしてもこの先やっていけるわけがありません!
もっと私がしっかりしなければですね。