Eno.20 えくね

■ きろく なな

―― 誰かの記憶が、拙い人間の文字で書かれている。 ――

目を閉じて、眠っていると、雨の音が聞こえます。
今日は、夜明けから、ずっと雨が降っています。
そろそろ、あがるでしょうか。
それとも、まだ続くのでしょうか。

雨は、涙を流せない誰かの為に、代わりに空が泣いているのだと、聞きました。
この身体が、涙を流した事はありませんが、それは、ただ、涙を知らないだけなのだと、思います。
この空は、誰の為に、泣いているのでしょうか。
ひょうや、まーがれっとや、あすかや、さかいや、――が、悲しんでいないと良いな、と思いました。