Eno.29 ハク・エセルバート

■ 5日目②『明日から頑張ります』



『はっくんって、魔法使いだったの?』


…そう、聞かれたときに分かった。
俺は魔法使いなんていう、大それたものじゃない。
魔法が使える生き物。それだけだ。


記憶が戻ったわけじゃない。
けど、最近はそれらを取り戻すための“コツ”が分かってきたんだ。

何かを問われたとき、その問いが“知っているか”“知らないか”が、ぼんやりとわかる。
記憶もないのに…だ。


…考えてはいたんだ。
“自問自答”すれば、俺のことが何かわかるんじゃないかって。


…今まで、ずっと怖かった。
記憶が戻ったとして、俺は俺のままでいられるのか。

怖かった。ずっと、考えないようにしてたんだ。
だから、ずっとみんなに合わせてた。
異質な自分を認めるのが怖くて。

自分の弱さを知られたくなくて虚勢も張ったし、そんな自分に自信が無くて、みんなをからかったり、馬鹿にしたりしてた。(それはそれで楽しいけどね)

俺は、そんなちっぽけな存在なんだ。

けれど、彼女は…そんな俺でもきっと受け止めてくれる。
そんな気がするんだ。




だから、少しだけ自分自身と向き合ってみようと思う。
…いやでも、今日はいいや。明日から頑張ります。

幸せな時間を、今の俺で過ごしたいから。

ありがとう、まいまい。
きっと俺は、君に会ったらまた軽口を叩いちゃうだろうからさ。

いつか…絶対に伝えるよ。
だから、少しだけ。待っててくれるかな?


-5日目② 日記終-