Eno.52 メモリー・オブ・ミオソティス

■ 近く遠い記憶

潮騒の音を聞いていると、生まれ故郷のことを思い出す。

そこに集う願いを抱えた、たくさんの人々。
彼らが結ぶ絆が象る、数々の想い。

――それを巡る、おぞましい闘争の匂い。


私は、この季節に生まれてから……
その歴史を、舞台の片隅に咲く花として、ひっそりと見守っていた。

故郷を惜しむ気持ちはある。
それでも、あの頃に……あの島に、戻りたいとは思わない。

"自分の願いをかけた戦い"なんかで、
私の大切な人の命が奪われるのは、もう嫌だから。