■ 少年の記憶──09(5DAY)
ばたばたばた
雨が降ってるからブルーシートを頭から被り、浜辺に座り込んで海を監視している。
視界があまりよくない。もし船が通っても気づくだろうか。
狼煙をあげようにもこの雨では難しいかもしれない。
メガホンはあるけど。声が届くのか?
掻き消されてしまいそうだ。
ざざざざ
波打ち際がどんどん迫ってきているように思う。
潮が満ちてきているようだ。
ちょぴと病み上がりだから頭が時折ぼーっとする。
「…………」
薄れていた記憶が少しずつ戻ってきている。まだ全部じゃないけども。
断片的に己の身に起きた出来事が脳裏に甦ってくる感覚にいっそう胸の傷が痛む気がする。
──ある日のこと。好奇心と冒険心がとまらなくて不思議な招待状の示すまま『島』に足を踏み入れた。
ココじゃない『島』。初めて訪れた『島』。人もいっぱいいたけど知らないやつばっか。
家族にも内緒で一人で。すぐに帰ってくるつもりだった。
少しばかり『未知の島』を探検して満足したら戻る。
そのつもりだったのに……
オレは帰れなかった。
『島』で見知らぬ少女に襲われ怪我をした。
でも致命傷になるほどのものでもなかったから、逃げて森の中に身を潜めた。
じっと蹲って、ぎゅっと目をつぶって、その内ウトウトと眠気も襲ってきて意識を手放した。
意識が引き戻されたのは空気の冷たさが肌を刺す痛みに気が付いてだった。
そして、それからオレは────