Eno.190 贖罪のインディゴ

■ DAY 5













私の記憶はそれで最後。


雨がやんで、日が差して、
月がのぼって、また落ちて。

ひっくり返った船も、私たちも、もう何もかもがぼろぼろだった。

起きないあの子がひからびることはなかったけれど、
あの子はだんだん海に溶けていった。

溶けたあの子は、なんだかすごく生臭かった。
















「今日はぜんぜんつれないなあ」



岩場の小高い場所から、水面に垂らした糸を引き上げる。
釣り竿を放り投げて、そばに置いた日記を手にとった。
毎日すこしずつ読み返した、あの子の日記。

いちまい、ページをめくる。
最果てへの夢をつづったページのあとは、もう何も書かれていない。