■ DAY 5
私の記憶はそれで最後。
雨がやんで、日が差して、
月がのぼって、また落ちて。
ひっくり返った船も、私たちも、もう何もかもがぼろぼろだった。
起きないあの子がひからびることはなかったけれど、
あの子はだんだん海に溶けていった。
溶けたあの子は、なんだかすごく生臭かった。
「今日はぜんぜんつれないなあ」
岩場の小高い場所から、水面に垂らした糸を引き上げる。
釣り竿を放り投げて、そばに置いた日記を手にとった。
毎日すこしずつ読み返した、あの子の日記。
いちまい、ページをめくる。
最果てへの夢をつづったページのあとは、もう何も書かれていない。