Eno.320 ヤドの中の人

■ 住宅事情9

──かつて僕たちは繁栄を究めましたが、人口過密もまた窮まりました。
こんな小さな体格になったのは苦肉の策でしたが、それでも焼け石に水でした。
ぎゅうぎゅう詰めの僕らの故郷は、住宅事情でとうとう滅びてしまったんです。


大半が故郷と運命をともにしました。ごく一部が外の世界へ逃れましたが、
僕たちは人口過密の環境が長く、多くが広場恐怖症めいたものを患っていました。
ワンルームの中にいなければ安心できなかったんです。
ワンルームに住んだまま、広い外界で生きなくちゃならなかった。
これは、そのための住み家です。

こんなふうな同郷が、多分あちこちにいます。
かつての人口過密に比べたら、おそろしいくらい疎らでしょうけど。



で、賃貸なんで壊すと大変なんです………
きれいに使ってきれいに返さないと敷金戻ってこないし……