Eno.340 灰戸カミール

■ 物思いに耽る。

器にはガタが来ているが、“私自身”はすっかり快復した。
容量はちっとも足りていないが整然と手が収まっているだけで、苦痛はほぼ生じない。
妖精が雑に詰めなければそうはならなかったというのに。
さらには私なら他者に存在を知られるのも我慢できないような器に入れられるなんて……今までに味わったことのない屈辱だ。やっぱりバラしてしまおうかな。
……いや、気分で約束を破るなんてあいつみたいだな。やめておこう。


……あの子は、まだ怒っているだろうか。
怒るほど気にされてるだろうか。
何も思われなくなることを願うべきなのは、わかっているのだけど。

嫌、だなぁ……。