Eno.20 えくね

■ きろく きゅう

―― 誰かの歌声が、何処かで響いている。      ――

―― 決して、上手だとは言えない音階と言葉。    ――

―― もしも、他の誰かが聞いていたとすれば。    ――

―― 不思議とそれは、心地良さをもたらしただろう。 ――

―― 丁寧に聞き取ろうとしたならば。        ――

―― その言葉が、人間のものでは無いと。      ――

―― 気付く事も、出来たかも知れない。       ――

―― その言葉の意味も。              ――

―― その歌に乗せた想いも。            ――

―― 歌う者だけが、知る。             ――

―― 或いは、歌う者すらも、知らず。        ――

―― 唯、誰かが、その光景を見たのならば。     ――

―― それは、祝福をもたらしているのだと。     ――

―― そう思うのかも知れない。           ――