■ 夢と希望の裏側に
八尋さんはあたしの歌ってた歌を教えてほしいって言ってくれた。
それはあたしの夢だった。そしてあの子の夢でもあった。
両手を何度広げても足りないくらい広い場所で、
集まった全員と同じ歌を歌うのだとあの子は言っていた。
こうして空と海を見ているとどうしても思い出す。
あたしよりもずっと活発で、でも身体の弱かったあの子の事を。
最後の最後まで希望を捨てなかった、心の優しいあの子の事を。
勿論、普段だって全く忘れているという訳では無いのだけれど。
けれど今夜はいつもより少し明るい気分だった。
あたし達の夢が一歩近づいて、それを報告できるから。
それは千里にも等しい夢だ。
無茶だと言う人もきっと居ると思う。
それでも、今日の一幕を思い出せば――
「夢は叶うって、きっと信じられるよ」
あたしが人に夢を与えるように、人もあたしに夢を与えてくれるから。