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■ 今日は、どうしよう。

 
 海でも見ていようかな。

 今日も皆にいいことありますように。
 今日も皆が笑っていられる一日でありますように。










 私がまだ私である内に
 まだ手放せる内に
 海の底に沈めてしまう前に
 さびしいだけの水妖に成り果てる前に

 私にとってのともだちが 大切なものである内に


「……」


 家族、だったものが笑っている 

 大きなお屋敷 
 優しい使用人の皆さん 

 お母さんとお父さんと、可愛い弟達 


 弟のひとりが私を見た 
 私に、母にそっくりな――瓜二つな弟が私を 


「天使さま、神さまは私のことが大嫌い?」

「どうしてそう思う?」

「同じ顔、同じ声、同じものからでてきたのに 
 あなたは天使になって、私は怪物になったからかな」

「そうか」

「……」

「神は、乗り越えられる試練しか与えない―― 


 弟の後ろで、たくさんのものが燃えていた 

 屋敷も家族も全部燃やして 
 燃やし尽くした末に天使に引火した 


 ……なんて、嘘だ

「俺達はそう、自身に言い聞かせて信じることでしか強がれなかった」



 …燃え盛る劫火の中に、手を突き入れた 

 劫火は消えない 
 劫火の中で私は、弟が首から下げていたそれを取り上げ皆の幸いのためを想って祈った。 

 あぁそれにしてもなんて、 


 醜い夢だ 




 ――…火が燃える、音が聞こえる。起きて焚き火の番をしなければ…