Eno.83 なにかの群

■ なにかと島名

その群は、生き物の寄り集まった群だった。
種々雑多ななにか達の群。
人でないことだけが明らかだ。

それらには、人語を操ることはできない。
だが、人語を解する知能はあった。
それらは、人の隣人であるがゆえに。

この島は、デスアイランド島というらしい。
そう聞いたなにか──その内の一体は、群の仲間に島名を伝えた。
それらは人語を解する知能もあったし、仲間内で話し合うだけの社会性もある。
それは人の言葉とは少し違ったけれど、疎通ができるなら瑣末なことだ。
群のすべてが島の名前を理解するのには、いくらもかからない。

しかし群の全てが島の名を覚え切った頃、この島はまた違う名で呼ばれた。
人間の少年が呼んだ島の名は、遭難者クラブ島。
それが別名なのか、それとも新たな名前なのか、
群には知り得なかったし、ひとまずはどうだってよかった。

群は新たな名を覚える。
名というものの大切さだけは、それらは、よくよく知っていた。