Eno.41 カーシー・バクスター

■ 『遭難者クラブ』

遭難者クラブ、って石像に書いてある。
台座のところにこっそりね。

この島に潮が満ちても、いずれ引く日が来る。
そうしたら『遭難者クラブ島』はまた、島として生きる。
きのみがなって、木が生えて、動物がいて……
魚はいっぱい取れるし、ガラクタだってある、
『遭難者クラブ島』のあるべき姿に戻っていく気がする。

もしこの島に新しく人が流れ着いてきたら、
石像の台座を見て、『遭難者クラブ島』って名前を
つけてくれたりしないかな?
そうして、この島はずーっと『遭難者クラブ島』っていう名前で生きるの。
うーん、島に迷惑かな?

この島のことは、僕が大人になっても覚えているんだろうな。
もちろん、サバイバルしたことも、みんなに会ったことも。
パン屋の息子がサバイバル……なんて、
誰も知らないんじゃないかな。
あ、でも、落ち着いたらお母さんとお父さんには話したいな。

みんなが無事に帰ったら、
ずーっとこの島のこと覚えてくれていたらいいな。
僕がちょっぴりがんばったことを、知っていて欲しい。
ちょっとわがままかな?

潮が満ちるまであと少し。
やりのこしたことがないか、考えてる。