Eno.218 八〇七番

■ 記録

森に罠を仕掛けてみたら、イノシシがかかっていた。
……イノシシ、だよな、多分。
僕は動物には詳しくなかったし、そもそも、これが僕が知りうる生物であるかどうかも定かではなかったから、正解はわからない。
ともあれ、食べるためには、解体をしなければならない。
魚を焼いたり、サメをバラす分には、まるで気にならなかったけれど。
魚よりも僕らに近しい動物を殺害して解体する、という行為に対しては、少しばかり記憶に触れることがある。
別に、動物を殺すこと、それ自体に嫌悪感や罪悪感はない。
必要な手続きをしているだけだと、思っている。
まずは息の根を止める。せめて、これ以上苦しまないように。
それから、刃を入れて、皮を剥いで、内臓を取り除いて。
……そんな一連の作業をこなしながら、かつて同じような作業をしたことを、思い出す。
かつて自分がしたことについて、考えてみる。

僕は。
やっぱり、どこかがおかしいのだろう。
それを思い起こしても、何ひとつ感じることがない程度には。