Eno.291 海賊

■ 大海賊バルディッシュ・バルバロッサ様の冒険記6

イヤッハァ! 大勝ーーー利!

クソッタレ野蛮人からお宝を取り戻してやったぜ!
俺様の策が見事功を奏した形でな!



おかげでまた骸骨に逆戻りなわけだが、まあそれは大した問題じゃねぇ。
女と寝らんねぇのはちーとばかり厄介だが、女も命もお宝あっての物種だ。

それにどうせ港に戻ったらゴールドマンの野郎に連絡をつけて
こいつを買い取らしゃいいだけだ。

世の中には自分が呪いで髑髏になってでも珍品を欲しがる……
いや、髑髏になるような本物の呪いだからこそ余計に欲しがる
物好きな金持ちジジイが案外居るもんでな。

ゴールドマンはそういう奴等といくつもパイプを持ってやがるのさ。



今回の騒動で分かったが、
呪いのトリガーは十中八九「この宝の所有者であること」。

正確に言や、「自分はこの宝の所有者だという意識がある」上で「実際に宝を手にしていること」だ。

だから単に手渡されて宝を持っただけの鉄野郎には呪いが発動しなかった。
あいつからすりゃ「バルディッシュの所有物の宝を持たされただけ」だからな。
思えば野蛮人が全く骨になってる気配がなかったのも同じ理屈かもしれねぇ。
奴等にとっては「自分たちの宝」じゃなくて「精霊の宝」なのさ。



とにかくこれで一件落着
……とはいかねぇな。宝を売って金を得るまでが冒険だ。油断はならねぇ。

ま、野蛮人の野郎は当分仕掛けてこれねぇだろうが。



しかし今回一人でねぐらに忍び込むつもりだったが、
あのガキどもやジジイが俺を手伝ったのは意外だったな。
まあ半分俺が命令したようなもんだが。

理由は主に“俺を骸骨にしときたいから”らしい。
あいつらどんだけ骨好きなんだよ。豚の骨の煮汁でも飲んでやがれ。

ま、しかし危険な野蛮人のねぐらにノコノコついてきて
しまいにゃ食い物を漁りだす図太さは嫌いじゃねぇ。
もうちっと腕っぷしを鍛えるか、航海術でも学んでくりゃ
あいつらまとめて船員にしてやらなくもねぇな。



尤も……この島から出られたとしてあいつらが俺と同じ海に帰るのかは分からねぇがな。

この海は異常だ。ガキの頃から海と一緒に育った俺がそう思うんだから間違いねぇ。
もしかしたらここが所謂世界の果て、
海がなだれ落ちたその先の魑魅魍魎の世界って奴なのかもしれねぇ。

だとしたら魔物の一匹でも出てほしいもんだ。
動くパンの耳だのでけぇセミだのも魔物っぽいが、
もっと一目でこの世のものじゃねぇと分かる魔物じゃなきゃ意味がねぇ。

魔物の首を持ち帰りゃ、酒場で破落戸どもに武勇伝を語ってやる時に
大いに盛り上がるってもんだからな。