Eno.195 小鳥遊ユウリ

■ 希望の象徴

この島で暮らし始めてから、遂に一週間が経つ。
来た時には命を繋ぐだけで精一杯だったあたし達も、
必死で生きる内に随分と安定してきたように思える。
それこそ、沈みさえしなければここで暮らしていけるくらいに。

時々資源が枯れる事もある。けれど貯蓄も十分にある。
だから少し不自由するくらいで飢えるような事はほぼ無い。
それどころか、娯楽に使える時間もあって……。
絶海の孤島にしては楽しい時間を過ごせていると思う。

今日作ったのはその象徴とでも言うべきもの。
岩場に二つ並び立つそれは、でぃれくたーとあたしの像だ。
生き残るだけという事だけ見れば不要なものだけれど、
相手が作ってくれたというだけでどうしても嬉しくなってしまうし、
それ以外の人にも少なからず希望を与えているようだった。

真っ先にクラッカーを鳴らしてくれた八尋さん。
乾かしてあるクラッカーを譲ってくれたおにーさん。
他にも一緒に鳴らしてくれた子も数名居たりして、
祝ってもらえるというだけで心が満たされるのを感じたり。

作った先の意味は薄いものかもしれないけれど、
作った意味は確かにあったと思う。

生きる事において、希望というものが担う部分は存外大きい。
飯があっても、水があっても、希望が無ければ人は容易に死にうる。
これまでの生の中であたしが一番強く感じている事だ。

               ア イ ド ル
だからあたしは人に希望を与えるこの仕事が大好きだし、
この先もでぃれくたーと一緒に仕事したいなって思ってるよ。


「……もちろん、それだけじゃないけどね」