Eno.331 アイジロ

■ 18 『これから』のために

この島に残されていたボトルメールをもう一度見に行った。

船が来るとして運が良くてすぐ、悪くて7日か、もう少し
だけどそれより早く潮が満ちるかもしれないし、
7日目……明日を目標に頑張ってきたけどどちらもない可能性もある。

潮の流れが読めない、することもないから時間の流れを遅く感じる
イカダが転覆せずに済んでも、本当に厳しいのはそこからかもしれない。

独りだったら今の時点で発狂していてもおかしくない状態で、それでも前向きにやってこれたのは
「役割」があること、飢える恐れが早々になくなったこと、日差し遮れる屋根の下で眠れたこと……いろいろな理由があったからだ。
そのほとんどを手放して見つかるかわからないものを待って漂うのは……俺が考えてもぞっとする。

なんだかんだ書いたけれど、みんなが折れたり、消耗していくのを見たくないだけだ。

魚、貝、動物、植物
たくさんの「いのち」をもらって生きてきた
その分帰った時に人……ひとじゃなくてもいい、ほかのいのちの手伝いをして、「返して」いこう
そんな話をした。
何もできないまま、なんてことになったときにこの言葉を思い出したら、もっと辛くなるだろう

そんなの、あんまりじゃないか

そうなったら未練で幽霊どころか悪霊になる自信がある。
呪われたくなかったら、……って世界相手に啖呵切ろうとしているあたり、もう相当なのかもしれない。

ワサワサにも話し続けたせいかな……言えることは言っておこう精神
そういうことにしてほしい

……でも、イカダ事件の後、一方的に話していた俺を、あいつらはじっと見てくれていたんだよな