■ 陶器の日記
最近釣りの資源も涸れることが多くなってきた。
流された人々が揃って魚を釣っているのだろう。
魚はこの島の生命線だ。
涸れるほどに魚が皆に行き渡っているならば良いことだと思う。
私はただ争いごとのないように祈るばかりだ。
ここに来て六日も経つだろうか。
話によるとこの島は、遅かれ早かれ沈むという。
今のうちに脱出するための議論は重ねておくべきだろう。
しかし、もしも許されるなら。
私は、この島の住民と共にずっと暮らしていきたいと思っている。
私は、この先別々に生きるには少々、皆と力を合わせ過ぎたのかもしれない。
何しろ作られてすぐに流された私にとって、この島だけが、私の見てきた全てなのだ。
インストールされた知識と比べて、
この島の経験は何よりも私の中で光り輝いている。
願わくば、この島の全てを乗せられる方舟を造り、沈下と無縁の島を見つけて皆で静かに……
いや、所詮は空想だ。
祖国があり、家族がある者も居るだろう。
本来の機能を失った私が、そこに入り込むことは許されないだろう。
そんなことを考える。
皆が私と暮らすことを良しとしているかどうかを問うことさえ、臆病な私には出来ないのだ。
今宵の島は、埋め尽くされるような星空だ。
孤独な星などひとつとして無い。
まるで無数の全ての星が、出会うべき人と出会い輝いているようだ。
こんな夜空を見上げてしまった日には、私が物思わぬ器物であればと思わずには居られない。
しかし同時に、私に自我があるからこそ、この島の人々と出会い、悩む程にかけがえのない日々が得られたのもまた事実。
「我悩む 故に幸有り」
そんな言葉を自らに投げて、ハンモックに身体を預け、目を瞑る。
釣りの疲労もあり、意識はすぐに沈んでいった。