Eno.131 鰄 八尋

■ 漂流一日目:デッドエンドのその後で

―――もうね、死んじゃったかと思ってた。

だって、サメに食べられたらそこでおしまい。
生きていられる人なんているはずがありませんもの。

私はあの時、たしかな実感を得ていたの。
生命が終わる実感……的な何かを。

ほら、よく言うじゃない?
人が死ぬとき、今までの人生が脳裏をよぎって……とか。
私の、ううん、私たちの人生はサメに食い荒らされてもう滅茶苦茶!
いざその時が来てみたら、いいことなんか少しもなくて。
ちょっと笑っちゃったくらい。
笑っちゃいけないんだけど、でも笑うしかなかったわ。

パパ、ママ。
なぜか私は生きています。

この場所にもサメはいるけど、そんなに危険はないみたい。
シャークヘッドなんか影も形もなくて、可愛らしい小ザメばっかりです。
まだ生きてなさい、ってことなのかな?

あとね、私みたいに迷い込んだ人がたくさんいるの!
おかしな人はいないみたいだし、これならうまくやっていけるかも。
私は平気。大丈夫。今までだって、何とかやってこられたもの。

見守っていてね。