■ 少年の記憶──12(7DAY)
『ゆうれい島』で目覚めた時に持っていたものがいくつかあった。
まずは、携帯食料
お菓子がポケットにいくつか入ってた。まだ食べてはいない。
それと、救急キット。
少し使った形跡がある。たぶんあの時もらったのだな。
あと、ナイフ。
見覚えのあるやつ。胸の傷と刃幅は同じくらいだ。
徐々に霞がかった記憶がはれてはきているけれど、まだ思い出せないこともいくつかある。
その一つに、不可解な胸の痛みと傷跡。
跡が残っているだけで傷口はすっかり塞がってはいるんだけどな。
丁度、心臓の辺り。
──諦めないオレは一人になってもがんばった。
きっと心配してる家族の元へいつか帰れるように。
……とはいっても、やっぱ全然簡単じゃなくて。
帰れる方法を手にする望みは薄くどうにもできない所まで行き詰ってた。
挙句にあそこは物騒な島で殺し合いが平然と行われていた。治安悪すぎだろ。
オレも何度か襲われたし、その度に切り抜けはしたけれど。
ムカついたから仕返ししてやろーって思ったりもした。
それでも『一発ぶん殴ってやる』くらいなもんだ。
誰かを殺してまで己の望みを叶えたかったわけじゃない。
けれど、少年の想いなど奪う側は汲んではくれない
襲われて、逃げて、襲われて、逃げて────……とうとう捕まった。
命を奪われるだけならそこで諦めちまってたかもしれねえ。
けど、あの殺人鬼は▛▚▘が遺してくれた大事なものまで奪っていった。
それに、望みが叶わずここで力尽きるなら▚▜がいるあの木の傍が、▛▚▘がいる花畑がよかった。
その方が▚▜も▛▚▘もさびしくないだろ?
まあどうせオレの▓はあの森のあの場所に囚われているから、何処にいても引き戻されはしたんだろうけどな。
だとしても己の意思で帰りたかった。二人がいる所へ。
だから、オレは殺人鬼と取引をした。