■ おもいでななつ
▼頭の中で、思っている。
「……」
「アイジロに、ついていきたいって、言った、言えた」
「ちゃんと、言えた……」
「………………」
「いえ、た……んだ……」
「“やりたいことを、言いたかった”……」
「やりたいの、なかみは、おぼえてない……でも、」
「今日、言えたの、“ちゃんと私を見てくれる大人”に」
「……アイジロに……れーこおねーさんにも、カーシーにも、ワサワサにも、」
「“誰にもおこられなかった”、おこられなかったよ……」
▼【自分の意志を示す】勇気を手に入れた。
▼【大切な者達】がいることを今一度認識した。
▼星の煌めく夜。
子供がひっそりと、音もなく、小さく泣いた。
「……びっくりした、私は、“ミソニ”はほんとは、なきむし……?」
「“ミソニ”は、私だし、私は、“ミソニ”なんだけど」
「私がおぼえてないところって、なんだか知らない、ひとみたいで。
へんなかんじだったから、だから、」
「“ミソニ”は、おぼえてないところの私で、
今の私のかりてる、なまえでもある」
「でも、けっきょく……“佐場野ミソニ”ってだれなんだろ。
ほんとうに私?それとも私じゃないだれか?」
「まあ……いまは、いっか」
「もし、私じゃなかったら、」
「……いつか、返せるかな……このなふだ」
「でも……かえりたくないばしょ……うーん……」
「アヒルさんやっつ、今日はアイジロから貰った」
「……」
「つれてくの、たいへんな……きがする……?どうしよ……」
▼アヒルさんたちの運命や如何に。