Eno.346 佐場野ミソニ

■ おもいでななつ

▼頭の中で、思っている。

「……」


「アイジロに、ついていきたいって、言った、言えた」


「ちゃんと、言えた……」


「………………」


「いえ、た……んだ……」


「“やりたいことを、言いたかった”……」


「やりたいの、なかみは、おぼえてない……でも、」


「今日、言えたの、“ちゃんと私を見てくれる大人”に」


「……アイジロに……れーこおねーさんにも、カーシーにも、ワサワサにも、」


「“誰にもおこられなかった”、おこられなかったよ……」


▼【自分の意志を示す】勇気を手に入れた。
▼【大切な者達】がいることを今一度認識した。

▼星の煌めく夜。
 子供がひっそりと、音もなく、小さく泣いた。

「……びっくりした、私は、“ミソニ”はほんとは、なきむし……?」


「“ミソニ”は、私だし、私は、“ミソニ”なんだけど」


「私がおぼえてないところって、なんだか知らない、ひとみたいで。
 へんなかんじだったから、だから、」


「“ミソニ”は、おぼえてないところの私で、
 今の私のかりてる、なまえでもある」


「でも、けっきょく……“佐場野ミソニ”ってだれなんだろ。
 ほんとうに私?それとも私じゃないだれか?」


「まあ……いまは、いっか」


「もし、私じゃなかったら、」


「……いつか、返せるかな……このなふだ」


「でも……かえりたくないばしょ……うーん……」





「アヒルさんやっつ、今日はアイジロから貰った」


「……」


「つれてくの、たいへんな……きがする……?どうしよ……」


▼アヒルさんたちの運命や如何に。