■ 少年の記憶──13(7DAY)
『ゆうれい島』で迎える7日目の朝。今日も雨が降っている。
船影はまだ見当たらない。
本当にこの近海を通るのだろうか。いつ?
高波がどんどん島を飲み込もうとしている。
小さな島。娯楽なんてほとんどない場所に囚われのオレたち。
その中の一人に訊ねてみたいことがあったのと、遊びも兼ねて空瓶の中に手紙を詰めて渡してみたら返事があった。
嬉しくなってまた同じように手紙を書いて、瓶をあの場所に置いた。
次の日も瓶には新しい手紙を詰めて返ってきた。
その次の日も。
昨日は、少年が置いた瓶は真夜中になってもそのままだった。
朝になっても変わらず。
ないしょのやりとりはずっと続くものだと思い込んでいたけれど、そうじゃないんだ。
どちらかが受け取らなければそれは途切れてしまう。
伝えたかった言葉は届かず瓶の中に入った手紙はずっと海の中。ゆらゆらと。
でも、それでよかったかもしれない。だってさ、
「……オレは……いつか"罰"をうけないといけないんだ……」
その時は、世界の果てに行ったらロマンチックだろうか。
でも今はその時ではない。まだ諦めていないから。
──取引の内容は、
『奪ったものは返し見逃す代わりに自身の手で必ず命を絶つ』
それだけ。
ボロボロになった体を引き摺り戻った。
▚▜と▛▚▘が居るあの森に。魂はそこにきっと。
しょーじき、怖くなかったわけじゃない。
けど、あの時はもうそれしかなかったから。
オレは実行した。
カッコいい男に二言はないのだ。
それに、あの世じゃなくて夢の中でまた会える。たぶんな。
そんな気がするから大丈夫だ。オレはまた頑張る。
ナイフを取り出し、力の限り柄を握りしめて、己の心臓へと突き立てた。