Eno.47 冬月舞

■ 新しいメモ(3)2/2

はっくんがウチの頭を包み込んで、それで、何か詩みたいなのを歌ったのね。
頭の中でいや~な感覚がして、でも次の瞬間、世界は一変した。

真っ暗闇。暗幕の世界に、頭上を照らす白い月。
色とりどりの光が、泡沫みたいに揺蕩っていた。

はっくんはウチのこと「姫」って呼んでさ、ふふ、その時ばかりは、はっくんが本物の王子様に見えちゃった。

はっくんは魔法使いで、幻覚を見せることが出来るんだって。
幻覚だから、その世界では感覚がなくて、デコピンされても痛くなかった。


そのあとのこと。
ちょっと難しい話して、でもウチさ、言葉で伝えるの下手くそで。
ノリとかニュアンスでしか喋れないから。

だから抱きついてやって、「これで分かる?」ってやったらさ!!
あいつ、ヘタレだから、言葉でちゃんと教えて欲しいって言うの。
女の子にそこまで言わせる!?って思ったけど、そういうところも、まあはっくんらしいんだよね。

だから、勇気出して、「好き」って言った。
そっから先、どうするかははっくんの番だよ、って言って。


……キスされた。
感覚はなかった。
またしようね、って約束した。

……ダメ。書いてて沸騰しそうだから、おしまい。