■ あいたい?
会いたい。
なんだか、さいきん、その一言が書けないでいる。
こんな状況なんだから
顔を合わせて、協力して、生活のこととか脱出のこととかを
ふたりでがんばるほうが絶対いい。わかっている。
(………わかってるんだけどな。)
こんな状況だから、お互いを心の支えにするきもち。
そのきもちが、こんな状況だからこそってこと。
寂しいとか、不安だとか、…傍に居てほしいを
わかちあえるのは世界であのひとだけだと思ってしまうこと。
大人のじぶんがそういう傾きをうまく調整して
バランスを取らなくちゃいけない。
と、思いながら。
ぐるぐる。ぐるぐる。
こんな風にひとりでいると一度回り出した考えを
ストップするのが、難しい。
(それに)
(ロリータ服って男の子受けしないし。)
……なんて考えてしまうことそのものがはしたない気がして
むう、と唸りながら腕の中のアヒルクッションを抱きしめる。
(きみが相手なら、けっこうシンプルにいけるのにね。)
ふかふかのアヒルを抱きしめるのが好き。それだけ。以上。
───それだけではゆかずにうんうんと唸り続けているあいだに
太陽はうんと高くまで登って、そして、沈みはじめていた。