Eno.127 苺坂みるく

■ あいたい?

会いたい。


なんだか、さいきん、その一言が書けないでいる。

こんな状況なんだから
顔を合わせて、協力して、生活のこととか脱出のこととかを
ふたりでがんばるほうが絶対いい。わかっている。


(………わかってるんだけどな。)


こんな状況だから、お互いを心の支えにするきもち。
そのきもちが、こんな状況だからこそってこと。
寂しいとか、不安だとか、…傍に居てほしいを
わかちあえるのは世界であのひとだけだと思ってしまうこと。

大人のじぶんがそういう傾きをうまく調整して
バランスを取らなくちゃいけない。
と、思いながら。

ぐるぐる。ぐるぐる。
こんな風にひとりでいると一度回り出した考えを
ストップするのが、難しい。


(それに)

(ロリータ服って男の子受けしないし。)


……なんて考えてしまうことそのものがはしたない気がして
むう、と唸りながら腕の中のアヒルクッションを抱きしめる。





(きみが相手なら、けっこうシンプルにいけるのにね。)


ふかふかのアヒルを抱きしめるのが好き。それだけ。以上。



───それだけではゆかずにうんうんと唸り続けているあいだに
太陽はうんと高くまで登って、そして、沈みはじめていた。