Eno.145 留守みんと

■ 白いワンピースと心の染み

 自分にこんな顔が出来るんだ。

 貰った写真と、その中の真っ白なワンピース姿の自分を見て思う。
 自分の顔なのに、引き込まれる不思議な眩しさがある――なんて言うと、
 ちょっと自己陶酔しているみたいで妙な気分。
 そんなナルキッソスの様な気持ちより、意外性の方が大きいかも知れない。

 ただ、なんとなくだけれども、
 自分で思うほど自分は枯れていないのだろう。そう感じた。

 人間らしい愛くるしさとか、少女らしい子供っぽさ、そういった愛嬌なんて
 とっくにこの競泳水着を着る時にでも脱ぎ捨てて来たつもりだった。

 けれども、こんな風にいっちょ前に笑って振る舞う事が出来るらしい。
 ファイダー越しに見付けて貰った、自分の新しい側面は、
 こそばゆさと一緒に不思議な高揚感を与えてくれた。
 少しだけ、凝り固まっていた自分という物が柔らかくなった気がする。

 凍っていた心が溶けていく、なんて在り来りな表現だけれども、
 確かに私は暖かさに触れて、少しだけ前よりもなめらかになったと思う。
 まだ、誰にでも溶け込むとか、人と深く混じり合うまではいかないけれども、
 前より見ず知らずの人とも上手くやれる様な気がする。

 特別な勇気は、まだ出ないけれど――。