Eno.170 アルザス・リースリング

■ シーエルフの約束

メロにまた会いに行くと約束をした。
世界を渡る術は、実はある。ラドワが夢術(俺の世界では禁術)で異世界にしょっちゅう遊びに行っているし、逆に呼び込んだりもしている。時間の流れの差異だとか、世界を割り出すまでにかかる時間だとかあるだろうが、ラドワならなんとかするだろう。

また私を便利アイテム代わりにして、と呆れられる気もするし、ロクでもない対価を要求されそうだが、異能持ちの人間で模倣する力があると話せば興味を持ってくれるだろう。あいつは面白いものが好きだからな。


一番確実な方法は、相手の世界のものを貰うこと。
次にやりやすい方法は、自分の世界のものを相手に渡すこと。ただしこれは異世界に自世界の物が流通すればするほど困難になる。
そして時間もかかるし確実ではないものが、互いに過ごした世界のものに手を加え、どちらかが所有すること(どちらもが持つとやりやすくなるらしい)。
大規模な探知と要領は同じだとラドワは言っていた。世界規模レベルの探知を行うには、異世界に干渉するための術と相応の魔力が必要になる。どちらもラドワは持っているので、この辺りは困ることはない。


……孤独は誰だって怖い。当たり前のことだ。
一人は嫌だと、懐かしい声を思い出した。自分の愚かさに気が付いて、今度こそ守ると誓った、あの日のことを。

そんな話をしたら、アルザスらしいですねとアスティは笑ってくれるんだろうな。