Eno.180 影縫 白塔

■ 記録1 明朝

 
 気が付けば知らない場所に居た。
見渡す限りの途方もない水。陸地には森の姿が見えていたが社会性を感じる設備は無い。
近くに落ちていたボトルメッセージの内容を鑑みるに孤島、無人島というものらしい。
得られる情報は少ないが、無いより全然マシだ。見知らぬ土地で一先ずの身の危険が無いことも幸運と言える。

 ……どうにも似た状況下に置かれた漂着者が他にも居たことは予想外だが。
時期も踏まえ、ただの孤島でこうも漂着する人間が複数人存在することに疑念はあるものの
他の人間の言葉を疑っても仕方ない。少なくとも、敵対心があるようには見えなかった。

 先人の書置きを参考に、俺も今後の為に記録を残すことにする。
ボトルメッセージにするかはさておき記録があって損することもない。
筆記具は初めから手元に持っていた。
――俺には漂着時の記憶はないが筆記具が濡れていた形跡はない。奇妙だ――

 目下。まずの目標は生活体制の確立。水、食料は最低限。
朝になれば気温も上がり水の確保は急務になるだろうから。



 水辺には当然(恐らく)魚、森には木の実やら存外食べられそうな草。
あまり多くは見つけられなかったがもう少し散策すれば他にも食料はあるだろう。
もしかすると他の人間がうまいやり方を見つけてるかもしれない。
 砂浜に落ちていたタライとその他で簡易的な蒸留装置を作った。……いや装置と呼ぶには粗末だが、海水を飲める状態にする程度はできる。
 異能が使えれば火なんて幾らでも起こせたが……どうやらこの島では使い物にはならないみたいだ。
然しこれも、そう悪い話じゃあない。少なくとも俺にとっては。


所持品

木材、石材、布、金属片、斧、簡易蒸留器、手元灯、ナイフ、カメラ
壊れているものでは時計。
岩場で拾ったボールは……遊び道具として、くまがどうのと言っていた子供にでもやった方がいいのか? 分からん。

 蒸留器を使うのに焚き火を一つ使っているし、もう一つ予備で火種が欲しいところか。
仮眠を取ったら確保に動こう。
 或いは役割分担も視野か。……もう少し他者の動向を見たい。きっと俺も、他から見れば信用出来ないだろう。