■ 杞憂
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――――漂着7日目の夜
どこからともなく火が爆ぜる音がする
「よし、これくらいでいいかな」
辺りには自分を取り囲むように並べられた大量のプラ容器
中には真水と塩、そして生理食塩水を模したものが精製されていた
「これに応急処置用の布をセットしたら
即席の医療セットになるね
これならちょっとしたケガも安心!」
最近浜辺では鋭利な漂着物が流れ着き、森では動物に襲われたり、海にはクラゲも出るようになったらしい
島暮らしも過酷になって来たところで、やっと自分の出番がやって来たのだ
シオマネキは意気揚々と即席医療セットを持って拠点へ戻ろうとした
――――が…
「………」
「みんな疲れてるな~
何かあった時の為に生理食塩水をストックしておいて、医療セット的なもの作ろ~って、密かにペットボトルと海水を備蓄してたんだけど…」
「みんな即席医療セット作れるのね!?」
「生理食塩水を作ろう!って考えに至るの、私だけだと思って張り切っていたんだけど、若い子たちの適応力って凄いや…」
若い子には敵わないな~と、その場に崩れ落ちるシオマネキでしたが
(前向きに考えよう…私の出る幕がないということは重傷者がいないってことで、消して悪い事ではないはず、うんうん)
不安が杞憂に終わって、それはそれでいい…と胸をなでおろしました
「なんか、どっと疲れちゃったな…」