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■ 陽が落ちる

 

 昨日の朝から今日のこの時間まで
 ずっと船を待っていた。

 お星さまの言う通り
 お昼には一度 空が晴れた。

 大丈夫。
 何か皆変なの口にし始めたけど 大丈夫。
 やり残しがないように思い思いに過ごしてるだけだ。
 
 私も



 そう在るべきだろうか。

 けれども不思議なことに
 したいことが特に見つからないので
 先からプラスチック容器を見つけては水を汲んでいる。

 収集品の整理もした。
 全ては持って行けないから
 大切だと思うものだけを手元に残そう。

 これまで書いてきたものは
 燃やして 残ったものを瓶に詰めて流そう。
 その時には落ち葉と貝殻、割れたガラスも詰めよう。

 このことに意味なんてないよ。

 でも私は落ち葉と色々で作ったクッションと
 割れたガラスで作ったナイフによく助けられたから
 いつかの誰かの助けになったらいいな って思うの。

 ボールペンは見つからなかったしね。



 あぁでも   そうだなぁ
 木の棒ひとつ 燃やさずに入れておこうか。

 "生きることを諦めないで"って刻み込むんだ。

 あの子にも
 胸にあとがつく前に刻み込みたかったな。


 例えどんな理由があろうとも
 あなたを待つ誰かが必ずどこかにいるから。

 生きて
 生き抜いて
 生き続けて



 気付いた時には
 満足に死に続けられなくなった    私だけど
 ともだちと一緒に逝くことも叶わない 私だけど

 みとること
 みおくることができるこの魂に
 すこしだけ納得はしているから。

 旅路の果てで もう一度会いましょう。
 その時はまた 話を聞かせてね。



「船、は」


「……船は、」


「船」



「――…あしたはいいこと あるかなぁ」