Eno.164 きっこ

■ あとひとときの

『7日に一度、船が通る』

多分それが、わたしたちのタイムリミット。
この日を逃せば、帰れなくなるってことだとおもう。

小学生だってばかじゃない。そんなことはわかってた。
ずっとこの場所にいられないってことも。
みんなそれぞれの生きる道があるってことも。
いかなきゃいけない場所があるかもしれないってことも。

でもね、少しだけわがまま言っちゃった。
だって、わかんないふりは、こどもの特権でしょ?
ふかふかのおなかを抱きしめたら やわらかくてあたたかかった。

ここにはわたしのことを知ってる人なんていない。
ここでなら、好きなことができる。好きなことが言える。
つよいひとたち。だいじなひとたち。だいすきなひとたち。
ほんの少しのあいだだったけれど、みんなたいせつなおともだち。

変なひともいっぱいいたな。
おもしろいこともたくさんあった。
自由研究には足りないくらいたくさん。
全部夢みたいな時間。きっと忘れられない思い出になる。

でも、これが思い出になるのは……ちょっぴり嫌だな。
それって贅沢かな。贅沢かも。


・忘れたくないもの
 シャハル。
 これは、大切なお友達の名前。
 わたしは あなたの力になれたかな?