Eno.166 佐藤羽理生

■ 無題

この島のもう一人の住人は『ハルカさん』というらしい。
("ソウルネーム"という『苺坂みるく』という名前も、かわいいと思う)

『ハルカさん』はマメで、僕のことを気にしてくれるし、すごく優しいし、赤の他人の僕にも気配りをしてくれる。
資源だって、独り占めしたっていいのに。
多分だけど、いや絶対、すごくいい人だ。

けれど、未だに会えない。

僕が生み出した幻想なんじゃないかって思うことがある。

『ハルカさん』はどんな人だろう。
僕はもう、顔を見られてしまったけど、僕は彼女の(そう、多分、"彼女"。べつに男性だって何も構わないのだけど、いろいろな理由から、多分そう)、足跡しか知らない。
あとは、彼女が焼いてくれた魚の味くらいだ。

僕の見られた顔。
泣きぼくろとか、口が厚ぼったいところとか……。
なんか妙にまつ毛が長いとか、一重なところとか。
おおよそ好きじゃないところしかない顔でも、彼女はずっと俺に気遣ってくれる。

多分、初めてなんだ。
こんなに、僕が、人に興味があるの。
人を知りたいと思うこと。

『ハルカさん』。
僕は、あなたと話して、あなたのことが知りたい。